シリーズSA−28
ディスクリート部品で構成されている無線機は、劣化部品を交換すればいつまでも新品と同じ特性を維持することができるのが魅力といえるでしょう ところが 直すことができるにもかかわらずに故障のまま捨てられてしまったり、不当な修理を行われて再起不能になった個体も少なくはありません
回は正しいスルーホール抜けの対策を考えてみます
トラブルで持ち込まれたSAのフタをあけると
すべてのスルーホール部分がジャンパー処理されているSA−28をみることがあります
少なくても4−5台はみていますのでこの処置を受けたSA−28は結構多いと思います
ジャンパーすることにより将来的なスルーホール不良がなくなる対策なのですが、 SA−28やLS−102のスルーホール抜けはその構造に原因があります
SA−28もLS−102もベークライトの基板が使われ、両面にパターンが書かれています
両面基板など今から見れば当たり前なのですが
SAがつくられたときはまだ発展途上であり
両面基板はぜいたく品であり ましてスルーホールメッキつけるなど
ぜいたく品だったのです
そのためSAではスルーホールのメッキ加工は 基板代金が高価になるため、見送られてしまい文字通り 両面のパターン+メッキなし
という基板仕様となりました
基板に使われている銅箔パターンはその性質上、温かくなると伸びようとしますまた寒くなると縮もうとします
部品面には信号ラインしかなく、パターン面はGND兼用のために銅箔面積は広くなっています。
面積が広いほうがより大きなで伸縮するようになりますので 結果的に基板に反りが生じます
SAの基板が大きく沿っているのはこの銅面積の違いによるものなのです
通常の部品は部品面から差し込まれ、半田面に半田されるわけですから基板がそったとしても半田が外れることはありません
ところがSA−28では基板の裏と表をつなぐために両面パターンにメッキ線をつっこんで両面から半田してあります
基板に反りが生じるたびに 引き抜かれる方向や押し縮める方向へ力が加わり、結果、メッキ線は半田から外れてしまい導通不良になってしまいます、
これがSA−28シリーズに起こるスルーホール不良です
直すには簡単で、半田が外れてしまったところにフラックスを少しだけ追加して再半田すればOKです
さてスルーホールが不良になることが分かっているわけですから、
その部分をジャンプしておけばよいと考えつくわけです
そこで部品面パターン部分すべてをジャンパー線でくっつけてしまうという方法を思いつきます
このジャンパー処理をしておけば以後半田不良が起こってもスルーホールの不良症状は出ません。
で、例のジャンパーされたSA−28が出来上がるわけなのですが、
せっかくのSA−28のパターン面が汚くないですか? それに悪くもない部分までにジャンプをしておけばいいというのはどうかと思います
それにジャンパー線を半田したときにスルーホールを一旦半田で溶かしているわけですから、このジャンパーをつけた時点でスルーホール不良は直っているはずです。
本当は何も悪くないのに悪くなるかも知れないという対処療法的なものはどうかと思います。
オリジナル維持を!
そこでジャンパーで保護という対策はやめてスルーホールに使われているメッキ線を交換という方法を考えます
まずSAの基板のスルーホール位置を確認してください
緑色のジャンパーがあればこのジャンパーの半田されている部分がスルーホール化されているランドがあります
ランドを温めながらピンセットで使われているピンを抜きます
ピンはまっすぐに入っていますので両面の半田がとければピンセットでつまむだけで取り外せます
抜けたらランドまわりの半田を掃除をしてから
新しいメッキ線を入れます
このとき、 メッキ線をまっすぐ入れるのではなくパターンに沿って折り曲げて取り付けようにします
これだけで基板の収縮による垂直方向の力では 差し込んだメッキ線を動かすことができなくなりますので基板収縮によるスルーホール不良の症状は出なくなります
スルーピンが入っている場所は全部42カ所あります
頑張っていれかえちゃいましょう!
ついでに
SAに使われているコンデンサーもそろそろだめになりつつあります
フィルムコンデンサは外装部分がベリッとはがれてきていますし、
使われている電解コンデンサーのドライアップも考えられます
さらには抵抗の本体離断破裂、放熱グリス固着 段間コイルのコア不
使われている2SC710 711の酸化による作動不良など、
ありとあらゆることが疑われます
そこで行われるのが
見込み交換という方法です
オークションでも「コンデンサーをすべて交換しました」などと書かれている機械があります
たしかにケミコンは不良になりやすい部品ですし、実際に
中身の電解液が外に出てしまう、液漏れや 電解液が蒸発してなくなってしまう、 ドライアップなどの症状が出るわけですが
電解コンデンサーを利用する場合、容量をぎりぎりにつくることは珍しく、 容量が半分になったとしても 作動には影響がない場合が多いはずです、なのでそこまでして交換する必要はありません
80年代の不格好な大型ケミコンはもやはいまでは手に入らないレアアイテムです
それを見込み交換しちゃうなんてもったいないですよ
無線機はなるべくオリジナルの状態で残したいものです
SA−28のSSBはローカルで作った7.8MHzをIF信号を変調して
クリスタルフィルターでサイドを切り取るという方法で作り出します
この方法はSSBの創世時に確立した技術でその特性のほとんどは
クリスタルフィルターの特性によって決まってしまいます
またこのフィルターは送信も受信も両方で使われているため送受信のくり変え回路がフィルターの前後に入ります
最小限の回路でトランシーバーを実現させるためのものなので
構成上若干の無理が生じるのも仕方がないことかもしれません
またフィルターの特性がもろに出てきますので
濾波後の特性が暴れるのも仕方がないことです
今なら7。8MHz程度の周波数ならキャリアごとDSP処理が可能なはずです
しかし。世の中いろんなことをおっしゃる方がいらっしゃいます
「あんな特性の悪い無線機をまだつかっているのか?」
とか「SSBの音がおかしいよね」、「周波数動くじゃん」
たしかに設計上、無理や不整合な部分はいくつもあります
これらは手直しにより正常に戻すことが可能です
なにより今から30年以上も前につくられたものであることを忘れてはいませんか?
当時40chの無線機をPLLで合成してSSB波を送受信し
実用に耐えるようにつくられていたことに驚くべきです
今の無線機と比べてはいけません
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