SA−28PLLブロック再考

おなじみになりましたSA−28ですが今回、どう考えても納得のできないPLLループ不良のSA−28が持ち込まれました。パワーが出るもの すぐ近くでも受信ができないというものです。

結果はPLL内部のバッファトランジスタのパターン剥離で

 再ハンダして修復をしたわけですが、そこまで到達するまでにものすごい時間がかかってしまいました。

その原因は私自身の思い込みなのです

 


PLL部の確認

SA−28がパワーが出ないとか受信できないという場合、最初に確認するのはPLLの出口である19MHz台のローカル信号で、ここに周波数カウンターやオシロを当て、正確に出力されているかどうかを確認します。

 正常に出力されていなければ不良がPLLの回路ですしここが正常ならば本体の回路をみることになります。

 今回もこのローカル信号をオシロで確認して1chの19.165MHzが出力され、1.7Vp−p程度の電圧があるのが確認できます。

 ところがチャンネルを2・3・4・とあげていくと20chあたりでチャンネルが上がらなくなります

PLLのロック範囲が200KHz程度しかない状態といえばいいでしょう。

 いったんロックが外れると、1chに戻してもロックせず

電源のOFFONで1chに戻すと復旧します

  ロックが外れれば、周波数はどこに行くか分からず、

その結果、AMではパワーが出たりでなかったり、また、SSBであっては高SWRを招き発振状態に陥ったりします

 


 

PLL回路の見直しから

 

SAのPLL回路はもうすでに何百回も見ています。

しかしこんな中途な症状は初めてです。周波数のロックが外れるわけですからPLL回路のどこか?ということは間違いないでしょう

 最初はループフィルターのタンタルコンデンサーのショートかと思ったのですがそうではありません。

SAのPLLでこんな症状になるはずがないのです

回路は把握しているつもり(これがよくない)ですが、今回の修復のために1から追い直すことになりました。

少なくてもチャンネルの合成ができているわけですから

電子部品の不良ではなくなにか周辺定数系のトラブルのはずです

 

 局発回路

10.000MHzの水晶の発振を確認しつつ、2逓倍回路みます コイルからは20MHzの周波数が得られており次のミックス回路に入ってます

 

VCOはL901で19MHz前後を発振しておりこの出力をミックス用のFETへと接続しますG1とG2へと入力された二つの信号はD(ドレイン)から取り出されます .

 周波数はむねおお1MHz前後となりチャンネル設定用の分周装置へ接続されますこの近辺の不良ではないですね。

 

VCOのチェック

VCOのCV(コントロール電圧)を切り離します

 

R901とR902でバイアスが加わり19MHzあたりを発振します 極端に異なればVCO回路の障害ですがCVをVRで作って加えるとスムースに19MHz台の周波数が変化します。 

  おかしくありません。

 

そこでもう一度ループの部分からみなおそうとしたときに

PLLユニットを動かすとPLLが一瞬ロックすることが確認できたのです

 

「うおっつ これスルホールの不良じゃん」

動かすと直っちゃうのはSAの特徴のようなものでどこかの

スルーホール抜けの可能性が高いです。

実際抜けやすいスルーホールも存在し

LEDの電流制限抵抗の真ん中とIFユニットの真下(シールドケースに隠れている)部分のスルーホール抜けはよくみられます

しかし、 

 

PLL基板は面積も少なく、スルホールの不良はあまりありません 基板をみながら力を加えますが、再現しません

 直ってしまうと再現しにくいのがスルホール不良の特徴です。(これも思い込み)

とりあえずスルーホールをすべて打ち直してからフタをしめました

通常のスルーホール不良ならばOKのはずです

 

 

症状再発!

完全にフタをしめてからチェックをすると

「あっりゃー」

症状再発です

今度は完全にロックしません

おかしいです

スルーホールは完全にハンダし直しています

 

そこで症状が出ているときにそーっとフタをあけてみることしました

 

すると

ある角度にしたときにPLLがロックし正常になります

どこかの断線か接触不良か 線材の噛みこみあたりが疑われます。

「これは部品が壊れかかっている」と思い(これもよくない)

基板を裏返そうとすると周波数が

外れます なんだろうこの症状。

このとき19MHzのIF信号を見ていたのですが、ロックが外れるとレベルがちょっとだけ下がります。

 

結果

いろいろみた結果、以下が原因でした。

  デュアルゲートFETでミキサーにしているのですがFETをフルゲインで利用しています 混合すべき信号は19MHzの信号はC919 5p 19MHzのローカル信号はC918 1.5pという小容量コンデンサーを利用して受けています つまりどちらもごく僅かのレベルしか加えられておらずFETの利得により混合が行われています

ミキサーに利得があるのでローカル信号は少しでいいのです

今回のトラブルはQ903のコレクタが浮いてしまっていたというのが原因でパターンが浮いていても1p程度は容量が残るとおもいます 、そのためとても小さなローカル信号がG1に加わり、ミキサーとして動いていたということになります

 

 スルーホールではなく部品そのものが 線材に押し付けられていてパターンが切れちゃったんですね

再ハンダしたところ症状はなくなりました

 

自戒と弁護 

なんでこんな症状が見過ごされたか?

それはPLLのロックが外れてしまっても適当なパワーが出てしまうことにほかなりません。 SAの設計の段階ではPLLのロックが外れたときパワーを出ないようにする回路があります

それは4568の13ピンからQ908 Q909を通過し ロックがはずれたときにHを出します さらにこの信号は送信回路のトランジスタにつながりロックが外れたときにパワーを出さないようにする回路なのですが

どのSAを見ても4568から先の回路が非実装になっています

そのためPLLのロックが外れても、ファイナルが増幅できる周波数域ならば電波が出てしまい、一見動いているようにふるまうのです。

 ここで正常に作動していると勘違いし、PLLのほうへ気が回らなかったというのが原因でしょう

またスルーホール不良がPLL基板にはないと考えてしまったのがいけなかったのかもしれません。

ハンダ不良という考えが及ばなかったというのも原因です

 

まだまだ修業が足りないということした

 


 

いろいろ思うこと

SAですがこないだパワーの出なくなったSAを預かったのですが中をみて驚きました!

 友人曰く「コンデンサはみんな交換したから・・・」

電源からカップリングまですべてのコンデンサが交換されているのです。それも松下の高いヤツです

裏側にはお決まりのスルーホール予防のためのジャンパーが山のように行われています

 

これをみていろいろ考えました

まず、ケミコンはたしかに寿命がある部品ですがここまでして交換する必要はありません。

 無線機は結局は汎用部品の寄せ集めです

抵抗やらコンデンサーなどを交換してしまうと

どんどんオリジナルと違う無線機が出来上がってしまいます

 

せっかくのSA-28ですから、不良になったものだけ

交換しましょう。

 スルーホールの予備ジャンパーもそうです

抜けそうなスルーホールを見つけたら フラックス混ぜて再ハンダすればいいだけです

 以後悪くならないスルーホールに予備加工するのって

なんかもったいないです

せっかくのオリジナル性を損なう行為ではないかと思います。

 

 

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